心療内科ってなぁに? 第36回 もっと心療内科について知って欲しいな・・・

もっと心療内科について知って欲しいな・・・

前回は「長く続く咳」「長く続く息切れ」症状のある患者さん方が、当院を初めて受診されてから診断・治療の流れについて書きました。今回は心療内科がどのように関わっているか?について書きたいと思います。

器質的疾患と機能的疾患

初診外来では、呼吸器内科専門医の先生方が対応しています。レントゲン、CT、採血検査、呼吸機能検査を行い、見える形で示される病気(医学用語で器質的疾患といいます)について診断し、治療方針を決定していきます。

「長く続く咳」「長く続く息切れ」症状のある患者さんの中には、検査結果で目に見える形で示されない病気(機能的疾患)の患者さんもいます。機能的な症状とはどういったものかというと、脳や神経系の異常を介して生じる(検査では見えにくい機能的な)症状のことです。今の科学技術では、脳や神経系の異常を絶対値として示すことではできないので(とても示しにくいので)、機能的な問題が原因で生じた「長く続く咳」「長く続く息切れ」症状は検査結果ではみることはできません(この機能的疾患を引き起こしているのが“ストレス”です)。

心療内科での対応

さて、当院を受診して色々な検査をおこなった後、器質的(検査結果で目に見える形で示される)な病気が見当たらない場合、心療内科を紹介していただくことがあります(器質的な病気が無く安心されて帰られる方もいます)。心療内科に紹介された患者さんの反応は様々です。「私は心療内科ではない!」「メンタルの病気ではない!」といったような反応や、「実をいうとメンタルの病気かもと思っていました」といった患者さん、「心療内科ではないような気がするのだけれど、まあ話をきいてみるか?」といった反応などなど・・・です。

ストレス関連の疾患は肺炎などの病気とは違って、マイナスのイメージがあるようです。患者さんの言葉から、ストレス関連の疾患には「わけがわからない」「あいまい」「周りから変な目線で見られる」といったイメージがあるように感じています。心療内科領域の病気では、検査結果を目に見える形で示すことができないこともあり、患者さんのなかで「わかり難い」「不安が生じやすい」「マイナスのイメージにつながる」といった悪循環が生じやすいと考えています。

けれども、心療内科の病気も呼吸器科の病気も、その対応のやり方に変わりありません。ストレス関連の病気に対しても、肺炎や気管支喘息など他の病気と同様に、以下のような論理的なアプローチで対応しています。

  1. 必要な検査を行い、器質的疾患を除外します。
  2. ストレス要因をチェックし基準に従って(経験も踏まえて)診断します。

診断に沿って適切に治療していけばストレス関連の症状は改善していきます(難しい症例の場合は各科の先生方と複数人で協議します)。

このように当院では「長く続く咳」「長く続く息切れ」に対して、必要に応じて複数科の先生が関わっています。また、気道過敏性をしらべることができるアストグラフといった特殊な機械もあります。このような病院は他にはないので、「長く続く咳」「長く続く息切れ」の症状で困ったときには、当院受診を考えてみて下さい。入院での検査も可能です。

「長く続く咳」を詳しく調べる場合、24時間食道内PHモニター、カプサイシン刺激による咳テスト、メサコリン刺激に対する気道過敏性検査を行っています(7~10日間の入院になります)。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉