どうして「心療内科」で“うつ”や“不安”を診ているの?
「心療内科」は、「精神科」とよく間違われます。
制度上の問題もありますが、実際に、「心療内科」でも抑うつ症状や不安症状の治療も行っています。どうしてでしょうか?
「心療内科」では“ストレス”から生じる身体の症状を診ています。それ故、「心療内科」でも抑うつ症状と不安症状を診ています。
詳しく説明すると・・・
- “ストレス”とは、「ストレッサー(ストレス刺激)」+「ストレス反応(生体反応)」です。
- “ストレス”は、「脳」で処理されています。
- “ストレス”が、強すぎたり長く続いたりすると、「脳の異常」が生じます。
- 「脳」は「神経」とつながっています。そして「神経」は、身体の色々な臓器、器官(内臓)とつながっています。
「脳」は「神経」を介して「色々な臓器・器官」とつながっているので、強い“ストレス”によって生じた「脳の異常」は、動悸・息切れ・咳・食欲不振・ムカムカ・下痢・めまい・肩こり・筋肉痛など、色々な症状を引き起こします。これらが、「脳の異常」から生じた身体の症状です。
もちろん、「脳の異常」からは、“抑うつ症状”や“不安症状”などの精神の症状も引き起こされます。
つまり、「脳の異常」があると、精神症状(脳の症状)と身体症状(身体(内臓・筋肉)の症状)が生じます。
精神科と心療内科
- 「精神科」が診ている = 精神症状
- 「心療内科」が診ている = 身体症状
「脳の異常」からは、主に「脳の症状」=精神症状が引き起こされます。
「脳の異常」から身体症状も引き起こされるのですが、このことはあまり知られていません。
ですから皆さんの中では、「脳の異常」と精神症状が強く結びついていると思います。
気が付きにくいかもしれませんが、“強いストレス”から生じた「脳の異常」は、精神症状と身体症状の両方が同時に引き起こされます。
あまり知られていないかもしれませんが、「うつ病」の診断基準の中には食欲不振の項目があります。これは身体症状です。
- 精神症状が中心の場合は、「精神科」の領域になります。
- 身体症状が中心の場合は、「心療内科」の領域になります。
まれに、“強いストレス”から生じた「脳の異常」があるけど、精神症状は示さず、身体症状だけを示している患者さんがいます。
「脳の異常」から生じた身体症状では検査異常が出ない(出にくい)ので、強い症状を訴えているのに「何処に原因がある?」とわからないことがあります。
このような患者さんは「心療内科」の対象となります。
どうして「心療内科」で“うつ”や“不安”を診ているのか、なんとなくわかってきましたか?
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉