治療に関するお話③ “好きの向こう側”
どうして「脳を働かせすぎている」状態になってしまうのでしょうか?
この状態は、人で例えると「ずっと走っている」、自転車で例えると「ずっとペダルをこいでいる」、車で例えると「アクセルを強く踏んでいる」状態になります。
マラソンが好きな人は、他の人より多く「走っています」。
自転車に乗ることが好きな人は、他の人より多く「ペダルをこいでいます」。
自動車に乗ることが好きな人は、他の人より多く「車のアクセルを踏んでいます」。(仕事で必要があるからという時もあります)
他の人よりも多くできるのは、やはり「好きだから」です。
他の人より多く「脳を使っている」「脳のアクセルを踏んでいる」状態になるのは、やはり「考えること」が大好きだからです。
「嫌いなこと」であれば多くできませんよね。嫌と思いながら(イヤイヤ)やっている事は、途中でやめてしまいます。
「考えることが嫌い」「考えることが苦手」であれば「考える」ことを多く行いません。イヤイヤ「脳」を使っている人は、途中で使うのをやめてしまいます。
この話は、良いとか・悪いとかではありません。得意・不得意といった人それぞれの特徴の話になります。
走っている、自転車にのっている、自動車を運転している、これらは目に見えるので、“好き・嫌い”、“得意・不得意”、“どのくらい使っているか・乗っているか”について容易に知ることができます。
けれども、人の頭の中をのぞくことはできないので、“「脳」をどのくらいの頻度で使っているか”や“どのくらいの時間「脳」を休めているか”については、とてもわかり難いです。
普通は、他の人の頭の中など気にしないと思います。私も治療に携わっているなかで、“「脳」をどのくらいの頻度で使っているか”、“どのくらいの時間「脳」を休めているか”について意識するようになりました。
そして、心療内科の外来を通して多くの患者さんを診ているうちに、「考えることが好き」な人が「脳」を多く使っている、好きだからこそ「脳」を長い時間使うことができる、という事に気が付きました。
なんとなく原因がわかってきましたか?
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉