小児期・青年期の重症喘息患者の治療と管理

国立病院機構 福岡病院 名誉院長 西間 三馨

はじめに

気管支喘息をはじめとするアレルギー疾患は全世界的に増加しています。そして、若年者の重症気管支喘息は1980年代から1995年にかけての死亡の増加にみられるように、その解析と対応は緊急の課題となっています。また、乳幼児喘息の発作入院の増加と治療の難しさも問題となっています。

小児科に占める乳幼児喘息の実態、及び思春期~青年期の患者の動向と臨床症状の特徴、長期入院した重症気管支喘息児の長期予後、肺機能からみた若年者の重症気管支喘息、死亡からみた若年者の喘息等を解析し、 GINA(喘息管理の国際指針)や日本の成人喘息治療ガイドラインに対する意見も含めて、小児・青年期の重症気管支喘息の治療と管理を述べます。

1. 小児科における喘息患者数の推移と年齢分布

小児科での喘息患者数の推移をみると、当院小児科の外来喘息患者は1984年以降、年間2000~2500名で推移しています。入院患者では一時、発作入院は年間1280例までになりましたが最近は減少傾向にあります。 1974~1997年の24年間で、16,791例の喘息発作のために入院加療した喘息患者の年齢分布でみますと思春期と乳幼児のところにピークがあり、男子が女子の1.34倍、多くみられます。そして1974年~1981年、1982年~1989年、1990年~1997年の8年ずつを比較すると最近8年では低年齢児の入院が著しく増加し、従来、多かった10歳前後の年齢層が著減しています。この低年齢層の発作入院が減少せず、絶対数でみても増加していることには大きな特徴があります。それは、上気道炎、気管支炎、肺炎のような気道感染症の合併が極めて多いことです(図1図2)。

ISAAC(喘息とアレルギー疾患の国際共同疫学調査)のグループでの調査では全世界でアレルギーが増えて喘息も増えています。日本では福岡市で調査が行なわれました。小学校1年生と中学校2年生での喘鳴有症率はそれぞれ17%と13%というように年齢が長ずるに従って若干減少していますが、東南アジアの中では日本がもっとも高有症率でした(図3)。

一方、疫学データではどの年齢層も罹患率が変わらない状態にあるにもかかわらず、厚生統計の喘息の年齢階級別の受療率を見ると違ったパターンがみられます。1~4歳、5~9歳、10~14歳と受療率が減少していきますが15歳を過ぎると極端に低下します。これが以後に述べる若年者の重症気管支喘息の治療管理上での大きな問題の一つです(図4)。

2. 小児科医と内科医の喘息治療方法の相違

過去、国療南福岡病院、国立相模原病院、同愛記念病院の3病院の内科と小児科での患者の分布を調査した結果では、15歳~20歳まではこの3病院では圧倒的に小児科の方が多く診ており、20~25歳になるとこれが逆転してきて30歳ぐらいになると、ほとんどが内科で診ています。このように15歳~29歳はまさに小児科医と内科医が両方で診ている年齢層であることがさらに問題を複雑にしています。

同じ思春期~青年期の患者を内科重症度でみたときと小児科重症度でみたときでは、本来合致するが一番良いのですが、一致率は73%でした。合致していない例では、内科の重症度では小児科の重症度よりも軽く判定されています。つまり小児科で重症と考えられても内科では中等症、小児科で中等症と考えられても内科では軽症というグループが 1/4 あります。これが患者の小児科から内科への移行で大きな問題になります。

日本の小児気管喘息治療ガイドライン2000におけるステップ2:軽症持続型、ステップ3:中等症持続型に対してどのような薬物療法をするのかをみると、成人と比べて明らかに違うのは、小児はステップ2ではほとんど吸入ステロイド薬もベータ刺激薬も使用せず、吸入抗アレルギー薬の使用量が極めて高かったことです。吸入ステロイド薬はステップ3の軽い段階でもあまり用いられていませんでした。内服ステロイド薬もほとんど用いられません。すなわち、小児科医と内科医で治療上、大きな問題となるのはベータ刺激薬の吸入とステロイド薬使用であることが示されています(図5図6図7)。

しかし、日本小児アレルギー学会・ガイドライン委員会によって2002年に大幅な改定が行なわれ、図5、6、7にみるように、年齢別重症度別に吸入ステロイド薬の使用量が細かく決められ、早い時期から使うようになりました。

3. 学業、就職の問題

思春期~青年期の喘息患者をみるときに大きな問題の社会的・心理的な問題では、その背景にあるものの一つに学業があります。非常に重症で外来でコントロールできない患者は、施設入院療法という方法がとられますが、過去は入院してくる患者の平均欠席率は10数%でした。ところが津田(恵)の調査では最近の学校の欠席率は20数%になっていて、これは重要な問題となっています。それは、小中学生の外来患者の学校欠席率と学校での成績の関係を見ると、重症者ほど欠席率が高く学業成績が悪く、かつ高学年になるほど著明になるからです。結果として、知能偏差値と学力偏差値をとってみるとアンダーアチーバーといわれる、能力があるのに学力が上がらないグループが高学年ほど多くなってきます。

数年前に行なった重症喘息で入院していた患者の長期予後調査でも種々の生活上の問題(進学、就職、日常生活の障害など)があり、症状が残っている者ほど障害が強く出ています。

4. 思春期・若年者の臨床症状の特殊性

発作入院の年齢分布をみると思春期の重症喘息発作においては感染の合併による重症化は少ないという一つの特徴があります。喘息患者における無気肺は、とくに右中葉の無気肺が多いのですが、その無気肺の年齢分布をみるとこれは低年齢児に圧倒的に多く高年齢児における無気肺は極めて少ないことがみられます。逆に縦隔気腫・皮下気腫ではパターンが全く違い、思春期・青年期に多発します。このように若年者の臨床症状はかなり低年齢児の臨床症状とは異なるところがあります。

5. 長期入院療法を受けた重症喘息児の長期予後成績

1974年からの4年半に入院し退院していった127名の気管支喘息患者を対象にアンケート調査を1980年から1996年まで4回にわたって行いました。

1996年に回収された48例のデータでは、平均年齢は29.5±2.8歳です。過去の調査での寛解率は15.7%~40.9%でしたが、今回は寛解率は27.2%とかなり低いものでした。京都大学小児科の三河名誉教授が全国10施設の発症10年から20年経過した喘息患者の予後調査をしたときに寛解率が58%でした。同じく同愛記念病院の向山先生達が外来患者で調査したときに約30%と報告されています。私達の調査結果の重要な点は死亡率の12.7%です。勘算するとこの年齢層における喘息患者の死亡率の約40倍と極めて高率な死亡率になります。最近一年間の喘息の状態をみると、全く発作が出ない人もいますが、かなりの人がいまだに症状があり、ステロイド吸入薬もかなり吸入しています。病院への受診状況では、64.6%が病院にかかっており、内科が半分、小児科が半分です。肺機能をみると、特に%ピークフローが小児の重症患者よりも低下していることが注目されます(図8)。

退院時の平均9歳時の血清 IgE と、20年経ったときの血清 IgE を比較しました。 9.1歳時にIgEが平均2022.5±1362.5 単位であったのが28.4歳では529.4±445.9 単位と下がっており、上昇していたのは16例中1例のみでした。この20年でIgEが1/4近くに下がっていることになります。小学児童で調べたときは正常者のIgEの度数分布に比べて喘息患児及び喘鳴児のそれは1000~2000 単位のところに一つの大きな山を持つという特徴があり、今回の対象のように500~1000 単位のところには小さな山しかありません。一般にIgEが低下してくるのは30歳すぎてからです。この理解としては、個人で下るのではなく昔と今のダニの環境が違うからこのパターンをとる可能性も考えていましたが、今回の長期フォローアップの結果からみると個人の中で年齢が長ずるに従いかなり早期に総IgEが下っており、個体でのIgEの関与した免疫・アレルギー反応の低下を反映していると思われます。

月経、妊娠、出産に関する項目について述べます。初潮に関しては種々の意見があります。あまり初潮によって喘息の状態は変らないという考えが多いようです。我々のデータでも不変:70.6%、軽快:23.5%、悪化:5.9%と初潮によって喘息の状態はあまり変っていません。対象女子の平均年齢は26歳なので月経喘息は判定可能と考えらますが、月経喘息の率は23.5%とやや低率であり、そのうち月経前喘息が60%でした。妊娠すると喘息はどうなるのかについては、多くの意見は、良くなるが1/3、変らないが1/3、悪くなるが1/3です。今回のデータでは妊娠によって良くなったという人が66.7%と多く、かつ、その中の1/3は出産後も良い経過をとっており、妊娠によって喘息が悪くなったというのは今回の対象の17例ではいませんでした。

喘息が結婚にどういうハンディキャップがあり、後はどうなるかはよく聞かれる質問です。幸い、結婚のときに喘息であることを考慮したグループの場合でも制限になったのはわずか1例(3.4%)でした。既婚者のうちに子供が26人誕生していますが、26人の子供でアレルギー疾患有症率は34.6%、喘息有症率が15.4%でした。西日本地域の疫学調査のデータでは、家族歴に喘息があった場合に喘息がでる確率は1982年の時に9%、1992年の時に12%ですから今回の対象は年齢のわりにやや高い率です。

6. 肺機能からみた若年者の重症気管支喘息

長期入院療法経験者の20年後の肺機能は残念ながら良好ではありません。小児では発作のないときの%ピークフローは重症度に関係なく正常値を示します。しかし、青年期の重症患者では肺活量は正常ですが、%ピークフロー、%一秒量はやや低下ぎみであり、末梢気道の指標(V50)は明らかに重症患者の数値を示しています。

小学児童の喘息では、喘息がない児童、軽症喘息児、中等症喘息児、重症喘息児と分けてみると%ピークフローは全対象とも100%以上で、%一秒量はやや下がりますが%V50は重症者で50%となっています(図9)。今回の対象は、ほぼ重症者の値に一致していますが、%ピークフローが下ってきています。すなわち、小学児童の重症患者とは明らかに違う肺機能値をとりつつあるといえます。私は重症喘息患者では気道狭窄は経過が良好な時期でも常在していると考えていましたが最近の慢性気道炎症論は、それを裏づけてくれました。

また、加野が平均13~15歳の喘息死群と大発作群とコントロール群の3群を背景を同じにして比較したデータがあります。軽症群に比較すると明らかに喘息死群はV50が低いということは先のデータからも分かっていましたが、大発作群との喘息死群の差違は全くなく、これが大きな問題となります。すなわち肺機能値では両群は生前に分別できないということです。今回アンケートの平均30歳の人の肺機能成績は喘息死群の成績とほぼ同じです。したがって、彼らはハイリスクグループと考えられ、これからも充分な治療管理が必要です(図10)。

肺機能が非常に悪いことを示す他の見方として運動誘発喘息(EIA)があり、重症患者は容易に気道収縮を生じます。喘息重症者の方が明らかにEIAがおきやすい、つまり気道が非常に敏感で、日常生活上の大きな障害となります(図11)。その結果、重症喘息の中学生の背筋力、反復横飛び、握力等は、全国平均よりも低く、体力も伴わない結果が得られています。 EIAの強い重症喘息患者にとって、普通の運動を勧めても無理です。私達の病院では最もEIAのおこりにくい運動の水泳を一年中やることによって体力をアップし、あわせて気道過敏性も改善することを目的として院内の温水プールで水泳訓練を行ってきました。荒木らのデータに示されるようにトレーニングはEIA改善に良好な成績を示しています。しかしそれでもこの水泳ですら6分間を全速力でクロールで泳ぐと、重症な気管支喘息患者では気道収縮を生じます。

7. 喘息死

死亡した喘息患者の組織像では、気管支腔内の粘液の充満と気管支平滑筋の攣縮、基底膜の肥厚、好酸球の浸潤、肺胞の破壊が見られます。

日本における全人口での喘息死は徐々に減って最近の10年間では人口10万対3.0前後までになりました。

過去、1965年から1970年代にイングランドとウエールズから最初に発表され世界的に問題になった10歳から14歳の男子の急激な死亡は、いまだ記憶に生々しく残っています。日本でも同じように10歳から14歳の男子は約7倍の死亡率の上昇でしたが、これは1970年以降の5年間で0.4~0.5に下がってきています。

最近、喘息死の増加が言われていますが、1970年当時問題となった10~14歳台の年齢層では喘息死はさほど増えていません。しかしながら15歳から29歳の年齢層は明かに違う様相をみせました。男女とも1980年には上昇に転じ、その後の10年間で約3倍の死亡率の増加を示しています。しかし、これも1995年頃より激減してきました(図12)。

残念ながら当院小児科に1974年から登録された患者のうち、26年間で26名の喘息患者の死亡がありました。死亡報告は1996年6月が最後の例です。2例は悪性腫瘍による死亡でしたので24例を解析しました。

年齢分布は3歳から29歳、平均15.5±7.4歳で、男女比は男性の方が14例と若干多いのですが全国統計ほどの差はありません。当院での喘息死の年齢分布と致死的発作(LTA)の分布は明らかな違いがあります。すなわち低年齢でLTA例は多いのですが、この年齢で死亡することは少なく、日本小児アレルギー学会喘息死委員会がまとめている全国統計のデータも同じような傾向です。しかし当院のデータは、より若年者にLTAが多いという特徴があります。極だった違いをみせているのは私達の症例の24例の死亡のうち22例92%が重症患者で喘息死の可能性があることを予知された患者です。一方、喘息死委員会のデータでは喘息の重症者は32.6%と少なくなっています。 NFAの重症者も当院65.5%、全国集計35.4%と差があります。私達の病院と全国集計のこの大きな違いは喘息死の原因究明ならびに適切な対策を講じるために解明しなければならない問題です。

また、今回の24例の死亡場所も全国集計と大きく違い、私達のところはほとんどが来院したときには既に死亡しているという状況です。つまり、若年者の院外における発作死であるという特徴です。

喘息死のリスクファクターとしては、LTAと比較しますと受診の遅れがより多く、ベータ刺激薬MDI(定量噴霧式吸入器)やネブライザーの過度依存が多いなどが大きな問題として以前からで指摘されています。私達の死亡例の中でベータ刺激薬の使用状況がはっきりわかる10例では、70%が過度依存と考えられ、LTAに比してベータ刺激薬に頼っている率が高いことがわかります。

ビースレイ教授らの指摘したニュージーランドでの有名なデータは衝撃的でした。日本でのベータ刺激薬 MDIの使用状況をみるといくつかの注目される点があります。 1985~1995年までの毎年のベータ刺激薬MDIの販売本数をみると、3種類 のベータ刺激薬がほぼ同量出ています。日本小児アレルギー学会喘息死委員会データはニュージーランドスタディ、サスカッチワンスタディと近似した結果となっていますが、日本のデータは背景因子が一定しておらず断定はできませんでした。しかし、日本は喘息死が相対的に多いのは確かです(図13)。

思春期から青年期に死亡が集中する理由としては、

  1. 治療の主導権が医師や家庭から患者本人に移り適確な治療が行われにくい、
  2. 学業の質量の増加や就職等で日中の外来受診ができ難く、受診回数が減り断続的となる、
  3. 皮下気腫や縦隔気腫の合併が多くなったり、月経の影響を受けるなど、病態が変化してくる、
  4. 肉体的、精神に内科にも小児科にも適合しにくい、
  5. 実質的な単身所帯となり周囲の援助が得られにくい、

などが考えられますが、 (5)の実質的に単身所帯となり、かつ男子ほど援助する人がいないという状況になっていることがかなり問題として大きいと考えられます。

先の日本アレルギー学会シンポジウムの時に報告しましたが、難治型の思春期~青年期の喘息患者においては治療ガイドラインは別に設定すべきで、その作製上のポイントとして、喘息の重症度の設定の方法、重症度の医療者側と患者家族側の認識の調整、服薬コンプライアンス、学校・職場への啓蒙、ハイリスク患者の同定などが重要と考えられます。

8. GINA(世界治療管理ガイドライン)における問題点

喘息管理プログラムとして、(1)患者教育によって喘息管理における医師・患者間のパートナーシップを確立する、(2)症状観察と可能な限り肺機能測定を行い、喘息重症度の評価とモニターを行う、(3)喘息増悪因子を回避またはコントロールする、(4)長期管理のために患者個別の投与計画を立てる、(5)喘息増悪に対する管理計画を立てる、(6)定期的な経過観察を行う、となっています。

(2)の「モニターをきちんとすること」では、GINAは喘息発作を軽症、中等症、重症と分類して、%ピークフロー値を80%と60%、炭酸ガス分圧を45mmHgで線を引いています。しかし、これが実際に小児に当てはまるのかということです。喘息発作で入院した患者がベータ刺激薬を吸入してどう変化するかをみた私達のデータでは、入院を要するような患者の%ピークフローは30%ぐらいで、吸入した後でも40%ぐらいしかなりません。しかし退院するときは60%→80%ぐらいになります。したがって、GINAの吸入後60%以下は入院という指針を小児にあてはめるとかなりの患者が入院せざるをえないことになります(図14)。

同じように動脈血の炭酸ガス分圧の45mmHgが正しいのかということです。全く発作のない時、聴診で所見がある時、小発作、中発作、大発作、意識障害がある大発作と、6段階の炭酸ガス分圧をみると、大発作でも45mmHgを越えることは平均値としてはなく、45mmHgを越えるときには意識障害直前で極めて危険な数値です。すなわち思春期までの患者に45mmHgという数値設定は非常に危険で40mmHgと変えるべきであるということです(図15)。

次にガイドラインにおける喘息管理プログラムの項目3「環境整備をすること」の問題です。スポリックのデータでは、生まれた時にダニの曝露量が多い人ほどアレルギーになりやすいというデータもあり、重要な指導項目であることは異論はありません。実際、我々は空調システム、寝具の注意、掃除の方法、収納庫を多くする、室内動物は飼わない、などの指示はしていますが、例えば猫を例にとってその実現がいかに困難かを示します。今、日本での猫飼育率はペットフード工業会調査では10.6%であり、家の中で飼っているのは8.0%と推定されています。しかし、当院小児外来のデータでははかなりの喘息患者は年齢が長じるほどよく猫を飼っており、感作率をみると、飼ってる患者(n=51):64.7%、飼ってない患者(n=523):21.2%と高い感作率です。指導しているつもりでも実際はこれだけ飼っていることになります。理想的な環境整備をすることは今の生活体系をかなり変えねばならず、また経済的、時間的にも多くのエネルギーを要するので非常に難しいというのが現実です。従って薬を頼らざるをえないということにもなりますが、3日間入院した喘息患者の入院費では保険がきかないと7万~8万円かかり、頻回入院者では経済的に非常に苦しい状況になり、経済的に苦しければ環境調整はますます難しくなるという悪循環が生まれます。

ガイドラインには喘息がコントロールされた状態とは、(1)慢性症状がない、(2)急激な悪化がない、(3)頓用薬を必要としない、(4)日常生活の制約がない、(5)ピークフローが正常で日内変動が20%未満である、(6)薬剤の副作用がない、(7)心身の状態が正常に保たれる、となっています。

しかし、例えばピークフローの日内変動の20%未満が可能であるのか、また、喘息の重症度を%ピークフローで80%以上が発作性、60%以下が重症慢性型で、日内変動は20%未満が軽症であると示されていますが、それが小児で妥当かどうかです。

前述したように%ピークフローはたとえ重症患者でも小児では平均100%以上です。今回調査した対象の平均30歳の患者群でも無発作の時には80%であり、GINAにおける80%という数字は少なくとも思春期以前では妥当ではなく、小児では適応しにくい数字です。

肺機能値はダイナミックに変化する患者もいますし、また、たとえコントロールされていると思われる患者でも重症型の患者では日内変動を20%以内におさえるということは極めて困難なことです。

以上のようにGINAやその他の治療管理ガイドラインでは種々、理想的なことを述べていますが、残念ながらそれを複雑な背景を持つ青年期の患者に一律に適応するには多くの問題が横たわっています。

まとめ

全般的に気管支喘息がコントロールされやすくなったことは確かです。しかしながら重症難治性の喘息患者においては種々の問題があります。多種薬剤の長期使用の問題、日常生活の障害、進学・就職上の障害、夜間救急体制の不備、周辺社会の無理解など、多くの問題を現実に生じています。したがって早期より長期的、かつ社会的視野をもった真の意味でのトータルケアのシステム構築が国家的見地からも強く望まれるところです。

患者・家族向けの治療管理ガイドライン解説書
  • 日本小児アレルギー学会:患者さんとその家族のためのぜんそくハンドブック2004,協和企画,東京,2004
  • 西間三馨,森川昭廣:コ・メディカルと患者家族のための小児気管支喘息,現代医療社,東京,2003